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​倍数性を鍵に新しい医療を開発する

私たちが目指す研究

― 倍数性の謎を解き明かしがんや病気の克服をめざす ―

 バナナ、ジャガイモ、イチゴ、これらの共通点は分かりますか?これらは全て倍数性が増加した多倍体生物です。このように植物には多倍体がありふれている一方、脊椎動物は原則として2倍体生物です。しかしヒトの体内には実は多くの多倍体細胞が存在しています。当研究室では、このような「多倍体」、あるいは「倍数性」が、がんを始めとする様々な病気を克服する鍵になるのではないかと考え研究を進めています。れらのツールも駆使することで、世界でも当研究室でしかできない研究を展開していきたいと考えています。

 「倍数性」という言葉に馴染みがない人も多いと思います。倍数性とは、一つの細胞に染色体セットがどれぐらいあるかということです。ヒトの体細胞は基本的に2倍体(父由来・母由来の染色体が2本で1セット)のゲノムを持っている一方、多倍体とはこの染色体セットが倍加した状態(4倍体・8倍体など)のことを言います。心筋・骨格筋細胞や血小板を作る巨核球、肝臓の主な構成細胞である肝細胞などは多倍体細胞として有名です。そして重要なことに、このような多倍体細胞はがんや様々な疾患で増加することが知られています。最近の報告では、全てのがんの4割弱は多倍体化(=全ゲノムの倍加)を経ていると言われています。

生理的多倍体細胞.png
多倍体説明.png

 がんと倍数性との関連が最初に提唱されたのは100年以上も前に遡ります。しかし、まさにバナナやジャガイモが多倍体であることがあまり知られていない様に、病気で認められる多倍体の存在も長年見過ごされてきました。倍数性や多倍体細胞がどのように制御されているのかなど、教科書に載るべき倍数性の基本的な問いの多くも未だ謎のままです。

 当研究室では、このような倍数性を巡る基本的な謎や、特に病気における倍数性の意義を解明すること、そして、倍数性が持つ不都合な点を標的とした治療法を開発することでがんや臓器障害に対する新しい医療を実現することを目標にしています。


 長い間、倍数性分野はひっそりと取り残されてきましたが、最近では倍数性に関する報告が増えてきており、この分野は今まさに盛り上がりつつあります。また、当研究室は倍数性分野に軸を置き継続して研究を進める中で、様々な独自の倍数性研究のツール(多倍体化を可視化するマウス、多倍体がんを判定するAIツール、多倍体がん細胞株など)も開発してきました。
 

 当研究室は「独自の発想」「独自の着眼」を常に大切にしながら、これらのツールも駆使することで、世界でも当研究室でしかできない研究を展開していきたいと考えています。

目指す研究.png

大阪大学 大学院生命機能研究科 

細胞ネットワーク講座 倍数性病態学研究室

​松本 知訓

略歴

2008年3月    京都大学医学部医学科 卒業

2008年4月    神戸市立医療センター中央市民病院 研修医

2010年4月    神戸市立医療センター中央市民病院 消化器内科 医師

2013年4月    京都大学大学院医学研究科 博士課程 入学

       (肝発癌過程における遺伝子変異の生成機序や、肝発癌の起源細胞について研究)

2014年4月    学術振興会特別研究員 DC1

2017年3月    京都大学大学院医学研究科 博士課程 修了、博士(医学)取得

2017年4月    京都大学大学院医学研究科消化器内科学 研修員(博士研究員)

2017年9月    Oregon Health & Science University, Postdoctoral Scholar

                     学術振興会特別研究員 海外特別研究員

                     (Markus Grompe教授研究室で、肝細胞の倍数性変化に基づく肝再生・発癌機構について研究)

2020年8月    大阪大学微生物病研究所遺伝子生物学分野 助教  (原英二教授研究室)

                    (倍数性変化と細胞障害・癌の薬剤耐性化機構について研究)

2024年4月より  大阪大学大学院生命機能研究科 細胞ネットワーク講座 倍数性病態学研究室 准教授

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